「家を購入するとき、頭金はいくら用意すべきか」は長らく議論されていることです。頭金についてネットや本で調べてみると、多くのファイナンシャルプランナーが頭金は2割、3割貯めましょうと言っています。

この記事を読んでいる方は、少なからず頭金の必要性に疑問を持たれているのではないでしょうか。頭金が貯まるまで家を買わないか、今買うべきか悩みつつも、何となく頭金を貯めているという方も多いかもしれません。

結論から申し上げますと、頭金を貯めるまで家を買わないというのはおすすめしません。その理由を記事内で詳しく解説します。

 

 

 

「家を買うなら頭金が必要」といわれているのはなぜ?

なぜ「頭金なしで家を購入するのは危険」「頭金は2割必要」といわれているのでしょうか。

 

昔は頭金がないと住宅ローンが通らなかった

かつての金融機関は、頭金を2割入れてもらうことで借主の返済負担額を抑え、住宅ローンの貸し倒れリスクを減らそうとしていました。

そのため、融資可能な金額を物件価格の8割までとし、頭金を2割用意できないと住宅ローンが通りませんでした。

このような経緯があるため「頭金は2割貯めなさい」と親世代から言われることもあるかと思いますが、現代においてその定説は「安心」ではありますが「正解」ではありません。

かつてマイホームの購入は頭金が必ず必要だったのでハードルが高いことでしたが、現在は購入価格全額を融資するフルローン(頭金なし)もあり、そういったハードルは低くなりました。頭金が絶対必要!という時代は終わったのです。

 

頭金が少ないと総返済額が高くなる

頭金は多ければ多いほど住宅ローンの借入額が減るので、月々の返済額を抑えることができます。

文字ではイメージしにくいので、返済額のシミュレーションを図にして考えてみましょう。

頭金

0円

100万円

300万円

400万円

月々の返済額

12万5,000円

12万2,000円

11万5,000円

10万4,000円

総返済額

5,250万円

5,124万円

4,830万円

4,368万円

(金利:頭金400万円は1.17%、その他は1.61%)

頭金を400万円支払うと、融資率が9割以下になり金利が下がるため、頭金が0円の場合に比べて総返済額におよそ900万円の差がつきます。

同じ価格の物件でも、頭金を多く支払えば支払うほど住宅ローンの負担は減り、反対に頭金を少なければ住宅ローンの負担は増えます。このような話を聞くと、たくさん頭金を払いたくなりますが、頭金を支払ったことで生活が苦しくなっては本末転倒です。

 

フラット35を利用する場合は金利が高くなる

住宅ローンによっては頭金がどれくらいあるかで金利が高くなることがあります。フラット35もそのひとつです。

2020年7月時点の取扱金融機関が提供する金利の範囲と最も多い金利を確認してみましょう。

【フラット35】 借入期間:21年以上35年以下

融資率

金利の範囲

最も多い金利

9割以下

年1.300%~年2.060%

年1.300%

9割超

年1.560%~年2.320%

年1.560%

フラット35の場合、購入価格に対して住宅ローンの借入額が9割を超えてしまうと金利が0.26%高くなってしまいます。

自営業の方や個人事業主の方はフラット35を検討されている方も多いかと思いますが、頭金が少ないと金利が高くなることを把握しておきましょう。

 

 

 

「頭金が貯まるまで家を買わない」人が抱えるリスク

頭金はないよりはある方が良いのは間違いありません。しかし、頭金が貯まるまで家を買わない選択するのは果たして正解なのでしょうか。リスクはまったくないのでしょうか。答えはNOです。その理由をお話します。

 

今後金利が上がる可能性が高い

近年の住宅ローンの金利は0.4%~1.5%程度となっており、超低金利時代といわれています。

さすがにこれ以上金利を下げる可能性は低く、むしろ上がる可能性が高いでしょう。今なら低い金利で設定されていますから、頭金は支払える範囲でも、頭金0円でも借り入れできるのであればそれで問題ありません。

むしろ、心配しなければならないのは、頭金を貯めている間に金利が上がる可能性や引下げ金利(優遇金利)が無くなってしまう可能性が高いこと。

35年返済の場合、住宅ローンの金利が0.1%上がると総返済額は52万円増えます。この52万円をプラマイゼロにしようとするなら頭金は120万円必要になります。つまり、住宅ローンの金利が0.1%上がると、何年もかけて貯めていた120万円の意味がなくなってしまうということです。

 

働き盛りに住宅ローンが返せない

住宅ローン申込時の年齢が高くなればなるほど、返済する期間が短くなってしまいます。返済期間が短くなれば、当然月々の返済額も高くなります。

そして、年齢が高くなると団体信用生命保険(以下、団信)に加入できないおそれも出てきます。住宅ローンの借り入れの条件として団信の加入は必須ともいえます。

団信は、申込時に健康状態を告知し、その内容をもとに審査されます。直近に大きな病気をしたなど健康状態が良くない場合は、団信に加入できず民間金融機関の住宅ローンを借りることはできないということが起こりえます。

やむを得ない事情がなければ、頭金が貯まるのを待つよりも働き盛りのうちに家を買ったほうがいいでしょう。

 

頭金を貯めている間も家賃を支払う

現在、賃貸にお住まいの場合は、頭金を貯める間も家賃が発生します。たとえば、毎月8万円の家賃を5年間払えば480万円にもなります。

480万円払っても、何も残りません。自分のものにもなりません。それなら金利が低い今のうちに住宅ローンを組んで、早くローンを返すなりお金を運用したほうが得策です。

 

 

 

まとめ

若くて健康な働き盛りの時代を、頭金を貯めるために費やすのはもったいない。

頭金があれば月々の返済額を抑える効果があるので安心なのは間違いないですが、ご自身の年齢によっては何年もかけて頭金を貯めるのもリスクがあります。いつか買うなら、今が絶対買い時。いつか住宅ローンを組むのなら、若くて働き盛りのうちに組むことをおすすめします。また、今後の金利上昇の可能性もあわせて、マイホーム購入のタイミングを見極めてくださいね。