建売住宅やマンション購入とは異なり、注文住宅は費用の支払い時期や回数、住宅ローンの組み方などが少し複雑です。あとから慌てることがないように、注文住宅に建てるときに注意しておきたい資金面のポイントや、支払い時期などを確認しておきましょう。

 

注文住宅を建てるときに注意しておきたい資金面のポイント

注文住宅に建てるときに注意しておきたい最大のポイントはこれから説明する2つです。もちろん、細かくいえば他にもいろいろありますが、資金面で特におさえておいてもらいたいことをお話します。

 

 

 

家が完成するまで複数回の支払いが発生する

ハウスメーカーや工務店、購入した土地の条件によって支払い時期は異なりますが、土地を購入して注文住宅を建てる場合、一般的に以下のような流れで取引されます。

1回目の支払い:土地の契約(手付金の支払い)

2回目の支払い:土地の引き渡し(残金支払い)

3回目の支払い:建物工事着工(着工金の支払い)

4回目の支払い:建物工事上棟(中間金の支払い)

5回目の支払い:建物完成、引き渡し(残金支払い)

多くの場合、土地の引き渡しを受けた後、建物完成までに何回かに分けて工事代金を支払います。

ここで注意しなければならないのは、住宅ローンが実行されるのは、建物完成時であること。注文住宅を建てる際は、建物が完成するまでの間に着工金や中間金の支払いなど、複数回に分けて支払いが発生するのです。

「そんなの全部住宅ローンで払えばいいでしょ」とお考えの方は要注意。注文住宅で住宅ローンを組むときは、建売住宅とは異なり、どのようにローンを組むかをしっかりと考えておく必要があるのです。次項で詳しく解説します。

 

住宅ローンの借り方を考えておく

着工金や中間金も手持ちの資金から出せれば問題ないですが、多くの方は土地の購入時で手持ちの資金を使い、後半の建物着工時や中間金を支払うときに手持ちの資金が不足します。マイホーム購入時には仲介手数料や印紙税などの諸費用もかかるため、手持ちの資金をすべて使ってしまうことはおすすめしません。

そこで必要になるのが住宅ローンです。

注文住宅を建てる方が住宅ローンを利用するときに比較されるのは、土地代と建物代、それぞれ住宅ローンを組む「2本立て」と、住宅ローンの融資が実行されるまでの間に必要な着工金や中間金などを一時的に用立てる「つなぎ融資」や「分割実行(分割融資)」です。

どちらにしようか悩まれる方が多い「つなぎ融資」と「分割実行(分割融資)」のメリットデメリットを下記にまとめましたので参考にしてください。

・つなぎ融資

メリット:抵当権を設定しなくても利用できる。

デメリット:無担保融資のため金利が高く、住宅ローン控除の対象外。

・分割実行(分割融資)

メリット:金利は住宅ローンと同じで、条件を満たせば住宅ローン控除が受けられる。

デメリット:手数料や登記費用がつなぎ融資より高く、土地と建物の抵当権設定費用がそれぞれ必要。

どちらのローンもすべての金融機関が扱っているわけではありません。また、分割実行の場合は、金融機関側に貸し倒れのリスクがあるため、頭金が少ないと最優遇の金利で借りられない可能性もあります。

また、金融機関によっては、建物完成前に住宅ローンを分割実行してくれるところもありますが、通常の住宅ローンよりも審査が厳しくなる点などにも注意しておきましょう。

 

 

 

注文住宅を建てるときのスケジュールと必要な費用

それでは、土地を購入して注文住宅を建てるときの流れと必要な費用をみていきましょう。

 

土地を購入するときの費用

土地を購入するときに必要な費用は下記のとおりです。

支払い時期

諸費用

内容

売買契約時

手付金

売買契約時に売主に支払います。相場は土地代の10%とされています。土地代の一部を先に支払うため、支払った分は最終的に土地代から差し引かれます。契約から引き渡しまでの間に買主の都合で契約を辞退する場合は返金されませんが、売主の都合で契約解除された場合は、売主から買主に手付金の2倍の金額を支払うことになっています。

印紙代

売買契約の書面に貼るための印紙代です。契約時に現金で支払います。(印紙代は土地代によって異なります)

仲介手数料

仲介を行った不動産会社に支払います。物件価格の3%+6万+消費税が上限とされています。売買契約時に50%を支払い、決済時に残りの50%を支払います。

 

支払い時期

諸費用

内容

引き渡し前

残金決済

土地代から手付金を差し引いた残金を支払います。住宅ローンを利用する場合は、当日に融資が実行されるので、残金は住宅ローンで支払います。

登記費用

自分で登記を行うことも出来ますが、とても手間がかかるため司法書士に依頼することが一般的です。すべての費用の総合計の相場は30万円~50万円、その内、約2/3程度は司法書士への報酬となります。

印紙代

住宅ローン契約書に貼るための印紙代です。(金額は土地代によって異なります)

ローン借入費用

融資事務手数料、ローン保証料、火災保険料など。(金額は、金融機関によって異なります)

固定資産税や都市計画税(日割)

所有権移転日以降から固定資産税が発生します。所有権の移転日から年末までの固定資産税(日割分)を売り主に支払います。

 

家を建築するときの費用

土地の引き渡しを受けたら、建物の建築に入ります。

建築費用は、ハウスメーカーや工務店にもよって段取りや支払い時期、回数は異なりますが、下記のように4回程に分けて支払うことが一般的です。

請負契約時…契約金(工事費用の約10%)

着工時…着工金(工事費用の約30%)

上棟時…中間金(工事費用の約30%)

引き渡し前…建築費の残代金(工事費用の約30%)

注文住宅を建てるときの流れと必要な費用は下記のとおりです。

支払い時期

諸費用

内容

工事請負契約の前後

地盤調査費

敷地の測量、法的制限のチェック、周辺状況の調査を行います。費用の相場は5万円~10万円です。

印紙代

工事請負契約書に印紙を貼付するために必要です。(金額は建築代により異なります)

建築確認申請費用

申請は建築会社が代行します。費用は10~20万円が目安です。

着工

地鎮祭費

地鎮祭(じちんさい)とは、着工前に行う工事の無事を願って行う儀式のことです。謝礼は2~3万円(別途お車代で5千円~1万円)、お供え物の費用が2~3万円で計5万円前後必要です。

上棟

上棟式費

建築がある程度完了してから執り行う行事のことで、「棟上げ」「建前(たてまえ)」とも呼びます。費用や内容には地域差がありますが、簡易的なものであれば10万円前後が目安です。

住宅ローン契約

印紙代

住宅ローンを土地と建物で別々に借りる場合に必要です。(金額は建築代により異なります)

引き渡し

登記費用

自分で登記を行うことも出来ますが、とても手間がかかるため司法書士に依頼することが一般的です。すべての費用の総合計の相場は30万円~50万円、その内、約2/3程度は司法書士への報酬となります。

ローン借入費用

融資事務手数料、ローン保証料、火災保険料など。金額は金融機関によって異なります。

※つなぎ融資を利用する場合は、利息のほかに印鑑証明、手数料などが別途必要です。

 

引き渡し後にかかる費用

建物が完成し、引き渡しが完了したタイミングで必要な費用をみていきましょう。

諸費用

内容

引っ越し費用

引っ越し先の距離や荷物の数にもよりますが、相場は5~12万円ぐらいです。2~3月の引っ越しのシーズンは、さらに高額になります。

新居の家具代

新居に置く家具や家電の費用も予算に入れておきましょう。どこからどこまで揃えるかにもよりますが、80~150万円程必要と言われています。こだわればこだわるほど費用がかさむので、必須の家具・家電から優先的に決めていくことをおすすめします。

 

ずっとかかる費用(ランニングコスト)

家を建てたらそれで終わり、というわけにもいきません。マイホーム購入後にかかる費用(ランニングコスト)を何にいくらかかるのかまとめましたので参考にしてください。

諸費用

内容

不動産取得税

不動産を取得した者が課税する地方税です。不動産取得税申告を終えて半年以内に納付書が届きます。算出方法は「不動産取得税の納税額=取得した不動産の価格(課税標準額)×税率」となります。

固定資産税

土地や建物を所有している者に対して課せられる税金です。納税額は「課税標準額(固定資産評価額)×標準税率」で算出され、3年に1度、評価額が見直されます。

都市計画税

市街化区域内に土地・建物を所有している者に課せられる税金です。市街化調整区域内の不動産(土地・建物)には都市計画税はかかりません。「課税標準額×上限0.3%」で算出されます。

火災保険・地震保険

住宅ローンを借りる場合、火災保険への加入は必須です。保険料は建物の構造や所在地などで変わりますが、平均額は年間10,000円~20,000円程です。

地震保険は単体で加入することはできないため、火災保険合わせて加入する必要があります。国と共同運営の保険のため、どこの保険会社でも金額は一律となります。

家のメンテナンス費用

木造住宅の耐用年数は22年といわれています。もちろん、自然災害などにより屋根や外壁などの修理が急に必要になることもあります。万が一の時に慌てることがないよう、日頃から貯蓄をしておきましょう。

 

 

 

まとめ

家のプランも大切ですが、資金面のこともしっかりと計画を立てておきましょう。

自分が思い描いた理想の家が手に入る一方で、建売住宅とは異なり、土地代金、着工金、中間金など段階的に費用を支払う必要があり、住宅ローンの選び方も複雑な面があります。

これらの費用を支払う際に手持ちの資金が不足している場合は、つなぎ融資や分割実行を利用するという方法も検討してみてください。注文住宅を建てるときに重要なのは、家のプランだけではなく、資金面の計画です。何にいついくら

かかるのか、手持ちの資金はどのくらい使うのか、住宅ローンはどのように組むのか、細かく計画を立てておきましょう。